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ブリヂストンが取り組む月面探査車用タイヤ

月面探査は、宇宙開発における最も過酷な挑戦の一つです。NASAが進める「アルテミス計画」では、持続的な月面探査の実現に向けた様々な技術開発が行われており、その中で重要な役割を果たすのが、月面探査車用のタイヤです。このタイヤの開発を手掛けるのが、日本のタイヤメーカー、ブリヂストンです。地球上のあらゆる地形に対応するタイヤ技術を持つブリヂストンが、月面という極限の環境に挑んでいます。

ブリヂストンの挑戦:月面探査車用タイヤの開発とは?

ブリヂストンは、NASAのアルテミス計画で使用される月面探査車用のタイヤ開発に取り組んでいます。月面は地球とは全く異なる環境であり、極度の温度変化や高エネルギー放射線、空気のない真空環境、さらには細かい砂状の地表「レゴリス」が特徴です。これらの条件は、従来のゴム製タイヤでは耐えることができません。そのため、ブリヂストンは従来の技術に加え、革新的なアプローチでこの課題に挑んでいます。

月面探査車用タイヤの特長

空気不要の金属製タイヤ:耐久性と信頼性の確保

月面では、空気が存在しないため、従来のゴムタイヤのように空気で内部の圧力を保つことができません。また、月面の温度は昼間には摂氏120度以上、夜間には-170度にまで達し、ゴム製タイヤでは柔軟性を失い、割れたり劣化したりするリスクが高まります。これを解決するために、ブリヂストンは全て金属で構成されたタイヤを開発しました。

この金属製タイヤは、空気を一切使用せず、内部に金属スプリングやスポークを配置することで、衝撃を吸収しながら車両を支えます。さらに、このタイヤは長期間にわたり過酷な月面環境に耐えることができ、月面での探査活動を支える重要な役割を果たします。

月面の砂地に適した設計:レゴリス対策

月面の表面は、レゴリスと呼ばれる微細な砂で覆われており、この砂は非常に滑りやすく、車両が簡単に沈み込んでしまう可能性があります。ブリヂストンの月面探査車用タイヤは、接地面積を広げることで、この問題に対処しています。タイヤの接地部分には、複数のブレード状のセクションが設けられており、それぞれが砂地にしっかりと食い込み、車両が安定して進むことができるよう設計されています。

また、このタイヤには金属フェルトが表面に施されており、このフェルトが砂との摩擦を増加させることで、滑り止め効果を高めています。この構造により、タイヤが砂地に沈み込まず、安定した走行が可能となり、探査車両が困難な地形でも確実に移動できるようになります。

耐久性と柔軟性の両立:長期間の探査活動を支える

ブリヂストンの月面探査車用タイヤは、耐久性と柔軟性を両立させた設計が特徴です。このタイヤは、車両の重量を支えながらも、月面の不規則な地形に応じてしなやかに変形することができます。タイヤ内部には、中央のハブから放射状に伸びる板バネ型のスポークが配置されており、これが接地面にかかる負荷に応じて柔軟に変形します。

この設計により、タイヤは月面の凹凸に適応し、過度なストレスがかかることなく長期間使用することが可能です。さらに、この構造は、タイヤの各部位にかかるひずみを最小限に抑えるため、金属疲労を防ぎ、タイヤ全体の寿命を延ばすことができます。

実証実験:鳥取砂丘でのテスト

月面に近い環境「ルナテラス」での試験

ブリヂストンは、月面の環境を再現するため、鳥取砂丘に設置された「ルナテラス」で実証実験を行っています。このフィールドは、細かな砂粒が特徴で、月面のレゴリスに近い性質を持っています。実際の月面と同様に、砂地が車両の走行にどのように影響を与えるかを確認するため、この場所でのテストは非常に重要です。

実験では、様々な条件下での走行テストが行われ、タイヤがどのように地形に適応するか、どの程度の荷重に耐えられるかを検証しています。特に注目されるのは、タイヤが砂地に沈み込まず、滑らずに安定した走行を実現できるかどうかです。これまでのテスト結果は良好で、タイヤの耐久性と走行性能が確認されています。

試験結果と今後の展望

これまでの実証実験では、ブリヂストンの月面探査車用タイヤが高い性能を発揮し、厳しい月面環境に耐えうることが証明されました。特に、砂地での安定した走行が可能であることは、今後の月面探査において大きなアドバンテージとなります。

ブリヂストンは、これらの実験結果をもとに、さらに性能を向上させるための改良を続けています。将来的には、アルテミス計画における有人探査車両にこのタイヤが採用されることを目指し、実際の月面での運用に向けた準備が進められています。また、得られた技術や知見は、地球上でのタイヤ技術にも応用される可能性があり、私たちの生活に新たな価値をもたらすでしょう。

月面探査車用タイヤが拓く未来

ブリヂストンの月面探査車用タイヤの開発は、単なる技術革新にとどまらず、宇宙開発全体における重要なステップとなります。月面という未踏の地を探索するためには、信頼性の高いモビリティが不可欠であり、ブリヂストンはその実現に向けて大きな役割を果たしています。

さらに、このプロジェクトで培われた技術は、地球上の厳しい環境でも活用できる可能性があります。砂漠地帯や極寒地など、従来のタイヤでは対応が難しかった場所でのモビリティを支える新たな技術が生まれるかもしれません。宇宙開発と地上での応用が交差するこのプロジェクトは、私たちの未来の生活をより豊かで快適にすることに貢献するでしょう。